EIRPはアンテナを等方性アンテナで置き換えたときに必要な電力のことで,送信電力,給電線損失,送信アンテナの利得から計算できます.
この記事ではEIRPの意味と計算方法について解説します.
目次
EIRPとは
EIRPは、Equivalent Isotropically Radiated Power(等価等方放射電力),またはEffective Isotropically Radiated Power (実効等方放射電力) の略で,アンテナを等方性アンテナで置き換えたときに必要な電力のことです.
アンテナにはある方向の電波強度が大きくなる性質(指向性)があります.
しかしアンテナによって指向性の強さが違うため,電波の強さを比べるには不便です.
そこで等方性アンテナ(isotropic antenna)を考えます.
等方性アンテナは,全ての方向に同じ強さで電波を放射する,理論上の点のことです.
つまり,等方性アンテナは指向性を持ちません.
アンテナの放射が最大となる方向(メインローブ)の電界強度を,等方性アンテナで再現するために必要な供給電力がEIRPとなります.
実線の円は等方性アンテナのアンテナパターンを表しています.
アンテナの絶対利得は等方性アンテナを基準に計算されるため,等方性アンテナの絶対利得は0dBiになります.
横に伸びているのがアンテナのメインローブで,この利得分を考慮して等方性アンテナに給電する電力がEIRPということになります.
EIRPの基準アンテナを半波長ダイポールアンテナとしたERP(Equivalent Radiated Power または Effective Radiated Power)もあります.
半波長ダイポールアンテナの絶対利得が2.14dBiなので,EIRPは
\[\mathrm{EIRP} = \mathrm{ERP} + 2.14\mathrm{dB}\]
と表すことができます.
EIRPの計算方法
\(P_t[\mathrm{dBW}]\)を送信電力,\(L_{ft}[\mathrm{dB}]\)を送信機-送信アンテナ間の給電線(フィーダ)損失,\(G_t[\mathrm{dBi}]\)を送信アンテナの利得とすると,EIRPは,
\[\mathrm{EIRP} = P_t-L_{ft}+G_t\]
となります.
EIRPの計算例
送信電力を200mW(-7dBW),信機-送信アンテナ間の給電線損失を1dB,送信アンテナの利得2.14dBi(半波長ダイポールアンテナ)とすると,
\[\mathrm{EIRP} = -7\ \mathrm{dBW}-1\ \mathrm{dB}+2.14\ \mathrm{dBi} = -5.86\ \mathrm{dBW}\]
となります.この結果のように,単位によってEIRPは負になることもあります.