通信系(Communication Subsystem)は、衛星の通信を担当するサブシステムである。
概要
通信系が持つ主な機能は、地上局からのコマンド受信、地上局へのテレメトリ送信の2つである。地上局からのコマンドは、衛星のミッションを遂行するためのトリガであったり、プログラムなどのデータを含む。地上局へのテレメトリは、衛星の動作状態の情報やミッションデータを含み、衛星の健全性を確認するのに必要である。
設計
衛星と地上間でデータの送受信を行うためには、衛星-地上間の回線(フィーダリンク、サービスリンク)を確立できるだけの電力が必要となる。回線設計では、この衛星-地上局間の減衰の影響を考慮し、送受信システムへの要求を明らかにする。
具体的には、送信系の電力やアンテナ利得からEIRPを計算し、それが自由空間伝搬損失などの各種損失によって受信系に到達するまでの減衰量を求める。さらに受信設備の性能(アンテナ雑音や雑音温度や雑音指数など)から求めた受信G/Tを用いて、受信機における受信C/N0を算出する。続いて、満たしたいビット誤り率から要求Eb/N0を計算し、符号化利得や変調損失などを考慮して要求C/N0を算出する。受信C/N0から要求C/N0を差し引けば回線マージンが求まるが、この値が十分な値となるようにシステムを構成する。
衛星からの送信電力には制限があり、周波数帯に対する電力束密度によって規定されている。
周波数
無線周波数は低周波から高周波まで幅広いが、衛星に使用される周波数はUHFやVHFが一般的である。この周波数は自由に利用できるわけではなく、送信電波は世界的に影響を及ぼすため、国際的な周波数調整が必要となる。
変調
変調方式としてはBPSKやQPSKなどの位相偏移変調(PSK)が一般的であり、PSKは同期検波方式によって復調される。
構成
アンテナと無線機の接続においては、カプラ、デュプレクサ、ダイプレクサ、ハイブリッドなどを使用してRF信号の分配・合成やアンテナの共有を行う。使用されるアンテナは様々で、八木アンテナやパラボラアンテナがある。